【完】悪魔な天使
カッ----。
次の瞬間、目の前が明るさで包まれる。
カーテンの隙間から溢れる微かな日差しが自分を照らしているようだった。
そして、目が覚めて
まず目に入ってきたのは丸まったチリ紙に潰れた空き缶、散らばったゴミ。
暑い…怠い…頭が痛い………。
どうやら自分は突っ伏した状態のようだった。
起き上がろうとするも身体が思うように動かない。
そこでようやく異常に気がついた。
ジャラリ----
その鎖の音は私の首元から聞こえる音だった。
自分の首に巻き付けられたその鎖は、
少しでも動けば肉に食い込んで痛みを感じさせた。
どうにか外したくても、手は後ろ手に何かで固定されていて動かせない。
「あれ、お前もしかして動いてる?やっぱりまだ生きてたんだ。」
「痛…っ!」
髪の毛を掴まれて顔をムリやり持ち上げられると、最低な父親の顔がそこにあった。
「言っとくけど、コレ全部お前のせいだからな。」
「…?」
「こうなったのは全部お前のせいだっつってんの。
お前が俺を家から閉め出そうとしたりな、歯向かってきたせいで、兄ちゃんあんななっちゃったよ。」
意味も分からず、男が指刺す方に目を向けてみるとそこにはボサボサの頭をしたお兄ちゃんが襖にもたれかかるように座っていた。
「ひっ…」
よく見れば、お兄ちゃんの着ている服は滲んだ血の色で染まっている。
俯いた顔には、口から顎まで固まった血がベットリだった。
その足元には、血のついた白いカケラとニッパーが落ちている。
「いや〜、ニッパーであいつの前歯を何本か折ってやったんだけどさ、男のくせに凄い悲鳴あげやがったよ。
近所迷惑で通報されるかと思ったけど、案外平気なもんだな。
お前も全然起きないし。死んでんのかと思ったわ。」
面白可笑しく話そんな話をするおじさんに、
私の全身をゾワゾワッと何かが駆け巡った。
やばい・・・・・
この人・・・
本当にヤバイ・・・!!
なんとか足の力だけで立ち上がり、この場から逃げ出したかったけれど、
ジャラッ!
と、益々鎖が首を締め付けるだけだった。
「あー、、逃げようったって無理無理。お前みたいな消費しかしねぇ家畜には首輪して調教してやらんとと思ってチェーンかけといたから。手首は強力粘着テープでぐるぐる巻きにしてあるし。」
「お…にぃちゃん!!」
今度は俯いて座ったままのお兄ちゃんへと手を伸ばす。
這い蹲り、唇を噛み締めて限界まで距離を縮めてみても、あと少しの距離…私の手は届かなかった。
「健気だねぇ。こいつは一晩中叫んでたから疲れて起きないと思うけど。
じゃ、俺はパチンコでも行ってお前等の為に稼いでくるよ。」
「ぅう…っ。」
言葉にならない思いがとうとう涙となって溢れ出た。
お兄ちゃんが優しくしてくれた確かな記憶ばかりが私の脳裏を刺激する。
こんな私が泣く資格ないのに………