だったらあんたが堕ちてくれ
不気味だった。
身に纏っているものも、表情も、場所も、状況も、何もかもがあの日の夜とは違う。
だけど椿の笑みはなぜかその日を連想させた。
実際あの夜に戻ったのかと思った。
笑む椿に重なって確かに見えたのだ。
あの日、あの夜。
髪を振り乱し必死な形相で追いかけてきたあの時の女の姿が。
成り行きで受け入れて、抗う暇もなく寝食を共にしてきたが、それがこいつの正体なのだ。
いま、目の前で笑んでいるのは偽物だ。
本当の椿は畏怖の象徴、災厄そのものだ。