だったらあんたが堕ちてくれ
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信じたくない。
目を逸らしたい。
だけどとにかく、話し合いの結果、その女はしばらくの間家に住むことになった。
もう一度言う。
“家に住むことになった”
その上で名前が無いと不便だと言う理由で、その女は椿と命名された。
一緒に生活をするなら家族みたいなもんだと、俺と妹と同じ、生まれた時期にちなんだ花の名前をつけられた。
もっとも椿は記憶喪失だから、いまの時期に咲く花の名前をつけることにして、なぜか俺が名誉ある世話役に任命された。
「椿はこの客間を使ってくれ。トイレはここ。風呂はこっち。その他はまあ、生活してけば覚えるだろ」
不本意極まりないが、本当に不本意、未だに認めたくはないが、一応家族なんだからと、敬語を使うことを逃れた俺はタメ口で椿に家の間取りを説明した。