だったらあんたが堕ちてくれ

※※※

信じたくない。

目を逸らしたい。

だけどとにかく、話し合いの結果、その女はしばらくの間家に住むことになった。

もう一度言う。

“家に住むことになった”

その上で名前が無いと不便だと言う理由で、その女は椿と命名された。

一緒に生活をするなら家族みたいなもんだと、俺と妹と同じ、生まれた時期にちなんだ花の名前をつけられた。

もっとも椿は記憶喪失だから、いまの時期に咲く花の名前をつけることにして、なぜか俺が名誉ある世話役に任命された。

「椿はこの客間を使ってくれ。トイレはここ。風呂はこっち。その他はまあ、生活してけば覚えるだろ」

不本意極まりないが、本当に不本意、未だに認めたくはないが、一応家族なんだからと、敬語を使うことを逃れた俺はタメ口で椿に家の間取りを説明した。
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