だったらあんたが堕ちてくれ
第二章 愛妻
全然寝た気がしない。
瞼はべったりと張りついて、活動を始めるのを全力で阻止しようとしている。
それでもなんとか、引き剥がす。
薄暗い部屋で、もそもそと温かな布団から抜け出す。
ぼやける視界のままふらふらと、洗面台へと向かう。
途中通りかかった客間を祈りながら覗く。
祈り虚しく、椿はスースーと気持ちよさそうに寝息を立てていた。
歯を磨きながら思う。
知らない女に追いかけられたってだけでもかなりトラウマだっていうのに、なぜかその女はいま客間で眠っている。