漆黒が隠す涙の雫

真っ赤になって困惑する私に、潤さんはふーっと溜息をついてから私の乗るベッドに手をつく。


そして、またゆっくりと潤さんの手が私へと伸びてくる。


ギシッと音を立てるベッド。


同時に身を縮こまらせる私。


そんな私の頬に、彼はまるで野生動物でも手懐けるように優しく触れた。


「……っ!」


嘘だ。


信じられない。


なんで私、この人に触れられても大丈夫なの?



触れられた所がじんわりと熱を持って、それと同時に確かに心拍が上がって体が熱くなる。


だけど、いつものように目が回ったり、気持ち悪くなったり、はたまた嫌な音が聞こえてきたり、そんなの全くなくて……。


むしろ、どこか心地良い。


「俺の事、怖い?」


「……怖く…ないです……」


「よかった。今でも俺は触れるみたいだね」



そうだ。


確か、初めて彼に出逢った時もそうだった。


不意打ちで頭を撫でられたのに、何ともなかった。


あの時は、たまたまだと思っていたけど……。


「“男に触られると失神する体質”なのは相変わらずなの?」


「……し、知っていたんですか?」


「新に愛華の事は散々聞かされてたからね」


「お兄ちゃん…に……?」
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