漆黒が隠す涙の雫
2*記憶
「話し始める前に、取り敢えずその喋り方やめてくれる?」
「えっ!?」
潤さんの話を聞くために、部屋の中にある大きなテーブルの椅子に促された私。
そのテーブルに、コトリと音を立てて置かれた紅茶の入ったマグカップに「ありがとうございます」と言えば、顔をしかめた潤さんにそんな事を言われた。
「わ、私、何か変な喋り方してますか!?」
「敬語」
「え?」
「あんま好きじゃない」
…そんな事を言われましても……。
「潤さん…お兄ちゃんと同い歳ですよね?」
「それ。“潤さん”てのもやめて。何か違う国の人みたいだから」
ち、違う国の人!?
潤さん…?
ジュンサン……。
「サランヘヨ」
「……」
「そこは笑うとこ」
「……あ、あはは」
なんだろ?
この人、話してみると大分印象が違う気がする。
ちっとも笑わないし無愛想で、なんだか少し怖い印象すらあったから、こんな風に冗談を言うなんて……正直少し戸惑うんだけど……。
しかも、マイペースというか、ズレてるっていうか……変な人。
うん。“変な人”。
その言葉が一番しっくりくる。