漆黒が隠す涙の雫
「とにかく、敬語もさん付けもやめて」
「は、はい…じゃなくて、えっと…。うん……?」
「じゃあ、俺の名前は?」
「えっと…えっと…。潤……くん?」
うわっ…なんだか凄く恥ずかしいなこれ。
上目遣いで、チラッと潤くんを見れば、意外な事に潤君は優しく目を細めていて……。
「ん。まだそれのがいい」
そう言って柔らかく微笑んだ。
うっ……。
何だか調子が狂うな……。
稀に見ない極上の美男子……て事もあるんだろうけど、この人の笑顔は無駄に破壊力が凄い。
彼の一挙一動にドギマギさせられてしまって、何だか少し悔しいや。
きっとあれだな。
彼は、こうして何人もの女子のハートを射抜いてきたんだろう。
「んじゃ、まぁ始めよっか。あー…やっぱりちょっと待って?」
私に手のひらを向けると、潤くんはポケットからスマホを取り出す。
サッと画面を操作したかと思うと、それを自分の耳へと当てた。
「………あ。昴?俺。…うん。気付いたよ。
あー…うん。大丈夫みたい。うん?……あーだからさ、面倒臭いんだよね。愛華への説明」
ん?
この人、今なんかサラッと酷いこと言ったような?
電話の相手は、どうやら昴さんのようだ。