漆黒が隠す涙の雫
そう言って笑う昴さんに、「金髪には敬語を使わなくていいって決まりがあるんだよ」となんとも訳の分からない言い訳をする潤くんに、私は苦笑する。
「わかりま…わかった。敬語はやめるね?」
「うん。よろしく。じゃあ、話を始めるとしようかな」
そう言うと昴さんは、ホワイトボードに文字を書き始めた。
「そもそもの始まりは、“ここ”からなんだ」
昴さんが、ホワイトボードにコツンとペンで音を立てて示したその文字。
それは……。
「鷹牙(おうが)……?」
「そう。鷹牙。聞いたことはある?」
「ごめんなさい…。全然分からない…」
「うん。そうだと思ってたから大丈夫だよ。新はきっと、ずっと愛華ちゃんをこの世界から遠ざけてきたんだね」
「…この世界?」
「うん。愛華ちゃん。鷹牙というのは、この辺り一体を占める“暴走族グループ”の事なんだ」
「……暴走族……?」
ドクンと脈が跳ねる。
左の二の腕が、ズクズクと疼き出して、慌ててそこに手を当てがった。
嫌な記憶が、
苦しい記憶が、
消し去りたいのに消えない辛い記憶が、
フラッシュバックしてくる–––––。