漆黒が隠す涙の雫
私は顔を上げ、来た道を引き返した。
***
「本当にここで…あってるの?」
そう言葉が漏れても仕方ないと思うの。
だって、今私が立っているのは、鬱蒼とした茂みの中に佇む大きな建物の前で……。
昔は何か工場のような物の倉庫だったのかな?建物と隣接している寂れた工場が、今となっては廃墟と化している。
その周りには、いたるところに廃材が積まれ、活気があった時の名残を残していた。
あの後、3日間聞き込みを続けて、ようやく辿り着いたのがこの場所って……。
自分が手繰り寄せた糸なのに、自信がなくなってくる。
大体、こんな所に人がいるわけないじゃない!
もしこんな所にお兄ちゃんがいたとしたら、何らかの事件に巻き込まれているとしか考えられない。
きっと何かの間違いだよ。
今日はもう辺りは暗くなり始めている。
薄暗闇が建物を余計に不気味に映し出していて、とてもじゃないけど、中を覗こうなんて気にはなれない。
そうでなくても、暗闇は苦手だ。
嫌な思い出が頭を掠めて、私は思い切り頭を振った。
今日はひとまず切り上げて、
もう一度だけ…もう一度だけ、明日聞き込みをしてみよう。
なんて、踵を返した時だ。