漆黒が隠す涙の雫
「愛華ちゃん?無理はしないでね」
「うん。大丈夫だよ。ありがとう」
心配そうに見つめてくる昴くんにニコッと笑って見せれば、昴くんは安心したように頷いた。
「さっき、鷹牙はこの辺り一帯を占めているって言ったけど、それには少し語弊があるんだ。厳密には、“占めていた”が正しい」
「…と言うと?」
「鷹牙は、ある時を境に2つに分裂した」
「……2つに?」
「そう。それが、
潤が率いる“翼鷹【よくおう】”と新が率いる“雷無【らいむ】”」
「……え?」
ちょっと待って…?
ちょっと待ってよ。
それじゃあ…まるで……。
「愛華ちゃん。俺と潤は、暴走族グループ“翼鷹”のメンバーなんだ。
そして、潤はこのグループのトップ。いわゆる、総長をしてる」
総…長…?
「う…そ…だよね?」
信じられない想いと、信じたくない想いで動揺を隠せない私に、隣に座る潤くんがとどめをさしてくる。
「うそじゃないよ」
「じゃ…じゃあ、今いるこの場所は…」
「翼鷹の総本部。いわゆる“アジト”みたいなもん」
潤くんと昴くんの視線を感じながら、私は長机の上で小刻みに震える自分の手の甲をひたすら見つめていた。