漆黒が隠す涙の雫

ドクンドクンと脈打つ心臓の音が、まるで自分のものではないかように耳元で聞こえてきて、シンとした部屋の中に響き渡っているような錯覚に陥る。




暴走族。


それは、私が何よりも憎くて、何よりも恐れている存在。


出来る事なら、もう二度と関わり合いたくなかった。


その存在が、今目の前にいる。



そして、それを知っているはずなのに……。



何で?


何でお兄ちゃんが、暴走族の総長なんかに……?




よぎるのは、あの時のあの言葉。





–––––––“復讐してやるから”





もしかして……。



………私の……せい?




「鷹牙は、前の代の総長の意向で極悪非道の過激派グループだったんだ。当時、暴走族の中でも、かなりめちゃくちゃやってるグループだった。女子供関係なしに、悪さばっかりやって、イカれてるって言われてたくらい。だけどそんなやり方で、この地区でも1、2を争う勢力にまで上りつめてた。

でもある時、“煌龍”という名の暴走族との抗争でまさかの大敗。将生は総長の座を退き、代わりに、その時副総長だった将生の弟の潤が総長を引き継いだ」


「……弟?」
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