漆黒が隠す涙の雫

「弟って言っても、血は繋がってないけどね」


そう付け加えて、アイスコーヒーをストローでかき混ぜる潤くんは、カランと音を立てる氷をどこか懐かしむような表情で見つめていた。


「潤は、元々訳あって鷹牙の副総長をやっていただけで、将生のやり方を支持していたわけじゃないんだ。だから、自分が総長になって、完全正統派の新しい鷹牙の再編を図ろうとした」


「完全正統派…?」


「そう。誰かを傷付けたり、何かを奪うための活動は一切しない。穏健妥当な暴走族グループをね。


だけど、そこでネックになってくるのが、将生のやり方を支持していた一部のメンバー」


「まさか……」


「そう。新もそのメンバーのひとりだった」



お兄ちゃんが……?


極悪非道なやり方を支持する、メンバーの中のひとり……?



「そんなはずないっ!!」



長机に手をついて勢いよく立ち上がったその拍子に、椅子がガタンと音を立てる。



「そんなわけないよ!だって…だってお兄ちゃんは、凄くお人好しで…誰にだって優しくて……、人を傷付けたりするような…そんな人間じゃない」



唇を噛み締めて、手のひらに爪がくい込むほど握りしめそう訴える私から、昴くんは気の毒そうな表情で目線を逸らして話を続けた。
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