漆黒が隠す涙の雫
藁人形に五寸釘を打ち付けられる勢いの嫌われっぷりで、そんなお兄ちゃんの聞き込みをしている私ですら怪訝な顔をされる始末。
妹だと言ったら潤くんのファンに、間違いなく血祭りに挙げられていただろう。
これじゃお兄ちゃん一生彼女なんか出来ないな……と変な心配をしてしまう反面、お兄ちゃんが悪く言われるのが何だか悔しかった。
お兄ちゃんは、人から恨みを買うような人なんかじゃないのに……。
「正面切って入るにはリスクが高すぎるなぁ……。取り敢えず、中に入る方法を探さなくちゃ」
「そんなのも考えないで来たわけ?」
背後からかかるその声に、弾かれるように振り返れば、
濃いデニムのつなぎに黒のマスク。
長めの髪を後ろで縛って、ポケットに手を入れたまま気だるそうに立っている潤くんの姿があった。
「何で…ここに…?」
「どうせひとりで乗り込むだろうと思ってね。そしたら案の定」
「と…止めに来たの?」
マスクを外しながら、じりじりと歩み寄ってくる潤くんに、一歩退く私。
「男に触れられただけで失神するくせに、族の本部に乗り込むとか無謀だとは思わないわけ?」