漆黒が隠す涙の雫
「俺が教えたんだよ」
「……潤!?」
「何その驚きよう。ずっとここにいたけど?相変わらず、愛華の事しか見えてないんだね」
「お前…何で愛華と…っ」
動揺するお兄ちゃんに、いたって冷静な視線を向ける潤くん。
私は、そんなふたりを交互に見ながらハラハラするばかり。
「新が愛華に隠してきた事、全部話したから」
「……っこの野郎っ!」
潤くんの胸倉に掴みかかるお兄ちゃんは、かつての親友に向けた表情とは思えないような憎しみたっぷりの険しい表情でわなわなと震えている。
そんなお兄ちゃんの表情を目の前にしても、いつものポーカーフェイスでその鋭い視線をしかと受け止めている潤くんは、一体何を考えているんだろう?
「あれほど…っ、言うなって言っただろ!?愛華を巻き込む羽目になるんだぞ!?」
「もうとっくにお前が巻き込んでるだろう。何で何も言わず、愛華の前からいなくなった?それで愛華がお前をほっとくとでも思ったのか?」
「…っ!俺はっ…!!俺が側にいた方が、愛華に辛い想いをさせるって…」
その先の言葉を飲み込んだお兄ちゃんは、眉間に皺を寄せたまま、ふたりのやり取りに耳を傾けていた私にはっと視線を戻した。