漆黒が隠す涙の雫
私に辛い想いをさせるから…?
だからお兄ちゃんは、私をおいていなくなったの?
疑念が確信に変わった瞬間だった。
「…お兄ちゃんがいなくなったのは、もしかして武くんと関係があるの?」
「……っ!」
ギクリと動くお兄ちゃんの肩。
お兄ちゃんは、昔から嘘のつけない人だもんね。
隠し事すらままならない、頭に“バカ”の付く正直者。
だからこそ、あなたが私に隠し事をしていたなんて…。
一番にショックだったのは、私を置いていなくなったお兄ちゃんの行動なんかじゃない。側にいたのにお兄ちゃんの隠し事に気付く事すら出来なかった自分自身の乏しい洞察力だ。
「お兄ちゃん。まさか…あの時言っていた“復讐”をしようとなんてしてないよ…ね?」
「……っ!その話はやめろっ!!!」
お兄ちゃんが、私に怒鳴るなんて、今まで生きてきた中でただの一度もなかったのに……。
お兄ちゃんは、額に汗を滲ませながら、目に恐怖の色すら浮かべている。
お兄ちゃんをこうさせてしまったのは、私なんだね。
あの日、私があなたに“助けて”なんて言わなければ……。