漆黒が隠す涙の雫
あの日、私が泣いたりしなければ……。
あなたにこんな顔をさせずにすんだのに……。
私が涙を流せば、あなたが私の為に自分自身の苦しみなんて顧みず救おうとしてくれる事なんて分かってた。
それなのに私はあの日、自分の心に負った傷の痛みを自分では背負いきれなくて……。
自分が思っていたより、ずっとずっと弱くてずる賢くて……。
涙を武器に、お兄ちゃんに半分の傷を背負わせようとした。
その事の重大さに気付いた時には既に遅くて、お兄ちゃんの心には、しっかり私の負った半分の傷が刻まれてしまっていた。
そう。
私は、確信犯だ。
あの時の私は、お兄ちゃんがこうなる事を一瞬でも望んでしまったんだから。
後悔なんて、いくらしてもし足りない。
もう一度あの日のあの時に戻れたのなら、絶対に泣いたりしないのにって。
どんなに苦しくたって、この傷を誰かに共有させるなんて…。そんな恐ろしい事は絶対にしないのにって。
だけど、そんな事をいくら思った所で、あの日は変えられない。
今、目の前にいるお兄ちゃんがこうなってしまったのは他でもない、“私”のせいだという事実は。