漆黒が隠す涙の雫

「新は何がしたいの?」


私達の沈黙を破ったのは、抑揚のない潤くんの声。


「鷹牙再編の時、俺が作る新しい鷹牙じゃ自分の計画を遂行する事は出来ないって。そう分かった新は俺らから離れていったよね」


「あぁ。そうだよ。お前が将生さんの思想を継がず、穏健妥当な鷹牙の思想なんかを掲げやがったからな。俺は鷹牙でいつかくる“その時”を狙ってたんだ。前の鷹牙なら、復讐だろうが何だろうがいくらだってさせてもらえたからな」


お兄ちゃん……?


何を言ってるの?


「俺らが新の目的には協力出来ないと言ったら、新は言ったよね。“それじゃあ、愛華の傷を癒してやれない!”って、“頼むから協力してくれ!”って」


「そうだ。それなのにお前は“協力は出来ない”とアッサリ断りやがった。お前には、俺の全部を理解してもらってた気でいたからな、正直がっかりだったよ」


お兄ちゃんは、潤くんを蔑むようにははっと乾いた笑いを漏らす。


「新は、やっぱり本物のバカだね」


「……なんだと?」


ふたりの間の空気が一変する。


睨み合うふたり。


よしと声がかかれば、今にも掴み合いになりそうだ。
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