漆黒が隠す涙の雫

「本物のバカだって言ったんだ。新のその目的を知って、愛華が今喜んでるように見える?」


「……っ!お前に何が分かる!」


「分かってないのはお前だって言ってんだよ。話をする場を設けるために使いをやれば、力任せに追い払いやがって。その馬鹿力でうちのヤツら何人傷付けりゃ気が済むんだバカ」


いつもより荒っぽい潤くんのその言葉にはっとする。



潤くんと再開したあの時、酷い怪我をしていた男の人を見た。


あれはひょっとして…お兄ちゃんがやったの……?


お兄ちゃんが人を傷付けるなんて…。


“信じられない”と言いたいところだけど、もうそんなの今日で何回目か分からないくらい繰り返した言葉。


認めたくないけど、今私の前にいるお兄ちゃんは、間違いなく私の知っているお兄ちゃんじゃない。


痛いくらい思い知らされてしまって……。


あぁ。まずいな。


目眩までしてきた。


「いい加減、こっちも堪忍袋の緒が切れた」


「あ?」


「“話し合い”なんてスタンス、新に通用するはずなかったね」


振り向いた潤くんの鋭い視線が、私を捉える。
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