漆黒が隠す涙の雫
その上、“一緒に帰ろ?”と言うのと同時に、繋がれた私の手の甲にちゅっとキスをしてきたのだ。


驚きのあまり、口をパクパクさせなから真っ赤になって固まる私の手を引いて、潤くんは何事もなかったかのようにその場を後にした。









「潤くんっ!あのっ!ちょっと…ちょっと待って!」


私の手を引いたまま、ズンズンと先を行く潤くん。


そんな潤くんに、つんのめりそうになりながら何とかついて行く私。



何で潤くんが私の学校にいたのか。


何で私を待っていたのか。


何で今、こんな事になっているのか。


潤くんはどこに向かっているのか。


私は何一つ分からないまま、ひたすらその背中を追いかける事しかできない。


潤くんてば、公衆の面前であんな事して、一体何を考えてるの!?


次に学校に行ったら、きっと私ただじゃすまないよ〜!!


潤くんを囲んでいたのは恐らく、潤くんのファンの子達だろう。


前にお兄ちゃんの聞き込みをしている時に、潤くんの噂を聞くことはよくあったけど、私の通う学校だけであんなにも潤くんのファンがいたなんて知らなかった……。


「じゅ、潤くんっ!!」


精一杯大きな声を出すと、潤くんの歩みがピタリと止まる。
< 82 / 85 >

この作品をシェア

pagetop