漆黒が隠す涙の雫
「ぶっ!!」
あまりに突然止まったものだから、潤くんの背中に顔面を強打してしまった。
「痛たた……。もう〜!潤くん、急に止まらないで。これ以上鼻が低くなったらどうするの〜!」
「愛華が待てって言ったんでしょ」
う"っ!そうだった……。
「だ、だって!潤くんが何の説明もなしにどんどん先を行くから…!そ、それに公衆の面前であんな…事して……」
そう言っている間にも、みるみる顔が熱を帯びていく。
それを隠すように慌てて俯けば、潤くんは繋いでいた手を解いて、ぶつかったせいで赤くなった私の鼻に確かめるように触れた。
「ああした方が、あの場を切り抜けやすいと思ったから」
「そ、そうかもしれないけど……」
…なんだ。
あの場を切り抜けるための作戦だったのか。
ん?
“なんだ”って何だ私。
「まぁ、それだけじゃないけどね」
「え?」
「愛華の学校共学だから、変な虫が寄り付かないように牽制しておかないとと思って」
「えっと……ん???」
変な虫??
潤くんは何を言ってるんだろう??
きょとんと首を傾げていれば、潤くんが僅かに口角を上げて、私の頭をポンポンっとなでる。