新宿ゴールデン街に潜む悪魔
捜索
響は漫画喫茶からSNSの裏アカウントに
「今日赤坂見附で4回目の空巣に入ります」
と書き込み作業服に着替えた。
今回の空巣は今までとは違う。意味を伴う。目的がある。ターゲットが決まっている。
村岡からの「今でかい鞄持って出ていったで」との連絡を受けた。探偵が味方につくとこうも簡単にターゲットの情報が分かるのか。響は村岡に感謝する。
空巣に入るなら今だ。
スパナとガムテープを持ってベランダまで行き、カシワギの家の窓ガラスを割る。少々複雑な鍵だったがなんとか割れ目から腕を突っ込んで開けることができた。
村岡のGPSがカシワギがコンロに入ったことを示している。香がコンロに向かう。村岡は顔が割れているので今度は香の番だ。話しかけて帰宅するのを遅らせるのが目的だった。
香はカシワギの隣の席に座った。彼女にしては珍しく短めのスカートに胸の開いたシャツという出立ちだ。
マスターは相変わらず初めての客にはにこりともせず機械的に接客する。香にとってはどうでもいいことだ。
香は大きなボリュームのジャズの中で、酔ったふりをしてカシワギに話しかけた。
「ねーお兄さん。凄いおっきいよねー!何センチあるの?」
カシワギは自分に話しかけるなんて意外だといった顔で
「俺か?188だ」
と言った。
「すごーい!なんかスポーツやってたの?」
「5年前まではな。柔術を」
「柔術?グレイシー?」
「いや、そんな有名なものじゃない」
若い女性に話しかけられたのはまんざらでもないのだろう。短い言葉ではあるが香の質問に答える。
響は部屋の中を物色する。カシワギがどういう人間であるか。それが知りたかった。
7つ目の引き出しを開けた時、響の胸は踊った。
通帳が入っていたのだ。
軍手をした手で通帳を開く。名前が書かれている。
「荻野凱(おぎのがい)」
カシワギでも麻生でもない荻野というのがやつの本当の名前らしい。
ついでに残高を見て驚いた。
1億7000万円。
空巣でこんなにも儲かるものか?村岡から200万くらい入っている財布を持ち歩いているとは聞いていたがここまでとは。
香は尚も話しかける。
「出身は、どこなの?」
「埼玉だ。少しだけ大阪に住んでいた」
「ダサいたまだー!私は東京だよ」
「そうか」
「普段はお仕事なにしてんの?」
「…まあ、サラリーマンだ」
ヤクザだとは言わない。
響は通帳を引き出しに戻し、ノートパソコンを立ち上げた。
ヤクザの組員とのやりとりがあるかと思ったが、メールは全て削除されていた。かなり用心深いのだろう。
荻野のメールアドレスを自分のスマホに登録する。
慎重にノートパソコンを閉めた。
今までの空巣とは違って今回は窓のガムテープを回収する。そして、大きめの石を割れたガラスの側に転がす。
誰かがイタズラで石を投げて窓を割ったように見せかけたかったのだ。
今回は空巣に入られたと気付かれない方がいい。
細工を終えるとベランダを伝い、響は足早に立ち去った。
荻野は7杯目のウイスキーを飲み干した。酔っ払ってきたのが分かる。
「姉ちゃん、ホテル行こうか」
荻野はものすごい力で香を店の外に引っ張り出した。
「今日赤坂見附で4回目の空巣に入ります」
と書き込み作業服に着替えた。
今回の空巣は今までとは違う。意味を伴う。目的がある。ターゲットが決まっている。
村岡からの「今でかい鞄持って出ていったで」との連絡を受けた。探偵が味方につくとこうも簡単にターゲットの情報が分かるのか。響は村岡に感謝する。
空巣に入るなら今だ。
スパナとガムテープを持ってベランダまで行き、カシワギの家の窓ガラスを割る。少々複雑な鍵だったがなんとか割れ目から腕を突っ込んで開けることができた。
村岡のGPSがカシワギがコンロに入ったことを示している。香がコンロに向かう。村岡は顔が割れているので今度は香の番だ。話しかけて帰宅するのを遅らせるのが目的だった。
香はカシワギの隣の席に座った。彼女にしては珍しく短めのスカートに胸の開いたシャツという出立ちだ。
マスターは相変わらず初めての客にはにこりともせず機械的に接客する。香にとってはどうでもいいことだ。
香は大きなボリュームのジャズの中で、酔ったふりをしてカシワギに話しかけた。
「ねーお兄さん。凄いおっきいよねー!何センチあるの?」
カシワギは自分に話しかけるなんて意外だといった顔で
「俺か?188だ」
と言った。
「すごーい!なんかスポーツやってたの?」
「5年前まではな。柔術を」
「柔術?グレイシー?」
「いや、そんな有名なものじゃない」
若い女性に話しかけられたのはまんざらでもないのだろう。短い言葉ではあるが香の質問に答える。
響は部屋の中を物色する。カシワギがどういう人間であるか。それが知りたかった。
7つ目の引き出しを開けた時、響の胸は踊った。
通帳が入っていたのだ。
軍手をした手で通帳を開く。名前が書かれている。
「荻野凱(おぎのがい)」
カシワギでも麻生でもない荻野というのがやつの本当の名前らしい。
ついでに残高を見て驚いた。
1億7000万円。
空巣でこんなにも儲かるものか?村岡から200万くらい入っている財布を持ち歩いているとは聞いていたがここまでとは。
香は尚も話しかける。
「出身は、どこなの?」
「埼玉だ。少しだけ大阪に住んでいた」
「ダサいたまだー!私は東京だよ」
「そうか」
「普段はお仕事なにしてんの?」
「…まあ、サラリーマンだ」
ヤクザだとは言わない。
響は通帳を引き出しに戻し、ノートパソコンを立ち上げた。
ヤクザの組員とのやりとりがあるかと思ったが、メールは全て削除されていた。かなり用心深いのだろう。
荻野のメールアドレスを自分のスマホに登録する。
慎重にノートパソコンを閉めた。
今までの空巣とは違って今回は窓のガムテープを回収する。そして、大きめの石を割れたガラスの側に転がす。
誰かがイタズラで石を投げて窓を割ったように見せかけたかったのだ。
今回は空巣に入られたと気付かれない方がいい。
細工を終えるとベランダを伝い、響は足早に立ち去った。
荻野は7杯目のウイスキーを飲み干した。酔っ払ってきたのが分かる。
「姉ちゃん、ホテル行こうか」
荻野はものすごい力で香を店の外に引っ張り出した。