新宿ゴールデン街に潜む悪魔
響
響は5年前のハロウィンの日に初めて新宿ゴールデン街に訪れた。
仮装のグッズなど持っていなかったので、長い髪を一本の三つ編みにくくり、つばの大きなハットを被り、付け髭をつけ、往年のロックバンドのボーカルを真似て、アイラインで目の上下にひび割れたメイクを施した。
我ながらチープな仮装だ。
響はそう思った。
街を歩く人たちは全身ジャック・スパローであったり、本当に抉れたようにしか見えない特殊メイクを顔面にしている。
ふと、今日本当に顔面に傷を負ったとしたらどうするんだろうと考えた。救急隊員も「これ本当の傷ですか?」となるに違いない。手当てに時間がかかることは明白だ。
そんなことはさて置き、ゴールデン街を一人で恐る恐る歩く。
なんとなくアメリカでいうスラム街を想像していた。東京のならず者が集まる野蛮な街ではないかと。下手をすると拉致られて殺されるんじゃないかというイメージすらあった。
しかしそんなことはなかった。方々のバーから活気のある声が聞こえてくる。
道を歩く人にヤクザやギャング的な者もいない。外国人が多い。半数近くいるだろうか。
少し安心する。
しかしながら…
ドアが閉まっていて窓一つない店がある。中が見えない。敷居が高く感じる。
ここは無理だな。
そう思い別の店を探す。
店内からアカペラでザ・ブルーハーツの曲を大合唱している店があった。賑やかで楽しそうだ。
入ってみようかなと思ったが、扉に「会員制」と書かれている。一見の自分は入れない。
「どうぞー!そこの顔にヒビ入ったお兄ちゃん!」
突然左から大きな声が聞こえてきた。他に呼び込みをしている店が少ないので少々驚いた。
「あ、あのー、入れますか?」
「入れるよー!いらっしゃい!若いね!ヒビちゃんでいいかな?あだ名だよあだ名。」
響はその矢継ぎ早なトークに面食らったが、とりあえず、その瞬間ゴールデン街デビューを果たしたのであった。
仮装のグッズなど持っていなかったので、長い髪を一本の三つ編みにくくり、つばの大きなハットを被り、付け髭をつけ、往年のロックバンドのボーカルを真似て、アイラインで目の上下にひび割れたメイクを施した。
我ながらチープな仮装だ。
響はそう思った。
街を歩く人たちは全身ジャック・スパローであったり、本当に抉れたようにしか見えない特殊メイクを顔面にしている。
ふと、今日本当に顔面に傷を負ったとしたらどうするんだろうと考えた。救急隊員も「これ本当の傷ですか?」となるに違いない。手当てに時間がかかることは明白だ。
そんなことはさて置き、ゴールデン街を一人で恐る恐る歩く。
なんとなくアメリカでいうスラム街を想像していた。東京のならず者が集まる野蛮な街ではないかと。下手をすると拉致られて殺されるんじゃないかというイメージすらあった。
しかしそんなことはなかった。方々のバーから活気のある声が聞こえてくる。
道を歩く人にヤクザやギャング的な者もいない。外国人が多い。半数近くいるだろうか。
少し安心する。
しかしながら…
ドアが閉まっていて窓一つない店がある。中が見えない。敷居が高く感じる。
ここは無理だな。
そう思い別の店を探す。
店内からアカペラでザ・ブルーハーツの曲を大合唱している店があった。賑やかで楽しそうだ。
入ってみようかなと思ったが、扉に「会員制」と書かれている。一見の自分は入れない。
「どうぞー!そこの顔にヒビ入ったお兄ちゃん!」
突然左から大きな声が聞こえてきた。他に呼び込みをしている店が少ないので少々驚いた。
「あ、あのー、入れますか?」
「入れるよー!いらっしゃい!若いね!ヒビちゃんでいいかな?あだ名だよあだ名。」
響はその矢継ぎ早なトークに面食らったが、とりあえず、その瞬間ゴールデン街デビューを果たしたのであった。