たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
フィーアは窓を開けると、ベビーハープを持って窓際に座る。

こもった空気が外の新鮮な空気と入れ替わる。この瞬間がフィーアはたまらなく好きだ。

ベビーハープは女性が簡単に持ち歩ける小型のハープで、屋敷の納戸でホコリをかぶっていたものをコンラートが使用許可を出してくれた。


”シャラーン”弦を撫でるように軽く音を出すと、子供の頃に良く歌っていたふるさとの歌を奏で始めた。


そして静かに歌いだす。

フィーアはハープの名手でもあった。
良く宮廷で歌ったものだ。


故郷を想い、家族を想い、未来を憂う。今はそんな気分だった。


二曲歌ったところで、突然ドアがノックされた。


深夜の訪問者にビクっとしてフィーアは体が固まった。


こんな時間に一体誰?

不審に思っていると、再びノックの音。

まさか泥棒?戸締りはきちんとしたはずだわ。

だったらヘレナ?

「どなたですか?」ドア越しに呼びかけても返事はない。

ルイーズは通いだからこんな時間にいるはずない。

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