たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「フィーア、俺が怖いか?」

ハープを床に置くとエルンストは一瞬鋭くもやがて優しい瞳でフィーアを見つめた。

突然の問いに驚きフィーアは答えをためらった。


怖い。エルンストの心が見えないから。

ヘレナからエルンストは女は抱いても愛さない。そう教えられた。

事実、私を抱こうとしたときも情欲に任せてのことだった。

どんなに想いを寄せても一方通行で報われない愛。しかもそれは身の程をわきまえない想いなのだから。

なのに愛してしまいそうで.....怖い。

身分を忘れて....想いを伝えたい衝動に駆られる自分が....怖い。



「分かりません」そう答えるのがやっとだった。


苦しくてやりきれない感情が胸にこみ上げる。それはこの胸を突き破りそうなほど辛かった。


背を向けて、どうしていいか分からないで立ち尽くすフィーアのからだを、エルンストは後ろからそっと抱き寄せた。










時間が止まった。







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