たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
空に輝く月は静かに二人を見守っている。


エルンストの腕の中で彼と触れ合う肌を感じ、体温を感じ、耳元で息づかいを感じ閉じたまぶたが小刻みに震える。

いつまでも引くことのない押し寄せる胸の鼓動は意識を奪う。



「フィーア.....」



背中から短く発せられた言葉はフィーアの心と体を絞めつけた。



激しく上下する胸の高まりをエルンストは気づいているだろうか。


熱くなるからだが肌を通して彼に伝わってしまっただろうか。


愛してはいけないひとなのに.....。

この腕を振り払わなければいけないのに....。


沸き上がる感情をフィーアは抑えることが出来なかった。



フィーアはエルンストの腕の中で熱い想いを受け止め、


エルンストはフィーアを抱きながらその熱い想いを受けとめていた。





静かな初夏の夜。



二人はお互いの気持ちをゆっくりと確かめ合っていた。
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