たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「ふぅ」ルイーズは不毛な会話を打ち切るようにため息をついた。

ここで愚痴ったところで、どうにもならないことをルイーズは良く分かっている。


法律を決めるのも、変えるのも結局カーストの一番上。

自分たちはこうして文句を言う事しか出来ない。

どうにもならないのだ。


「仕事しよっか」

ルイーズはカーテンの洗濯に取り掛かる。


フィーアも手伝うために水汲みを黙々と続ける。


仕事をする二人に太陽が照りつける。人間の思惑など知らぬとばかりに。


突然ルイーズが話題を変えた。


「ご主人様が夏をお嫌いなの知ってる?」


フィーアが井戸の水を桶に注いている時だった。


「....知らないけど?」


「ご主人様のお母様が幼い頃に亡くなったのは?」


「それも初耳」


フィーアの手が止まった。


「私が知っているのは、ご主人様は女性を愛せないってことだけ。ここに来て、それだけヘレナさんが教えてくれたの」


言いながらフィーアは「えっ?」っと気づいてしまった。

瞬時に血の気が引き、口元の笑みが消えた。
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