たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「───閣下、ゲオルグ陛下がお呼びです」

エルンストたちが食事をするテーブルに下級士官が敬礼をしながらエルンストを呼びにきた。


「わかった。すぐ行く」

フォークを置くと、食事の残った皿の片づけを呼びにきた士官に頼むと、
ファーレンハイトに「この話はまたな」そう言って席を立ち、皇帝の執務室へと向かった。





*****


回廊をいくつも曲った城の一番奥に皇帝の執務室はあった。

正式な謁見ではないため、執務室に呼ばれたようだ。


執務室の前で警備する近衛兵に敬礼されると、エルンストは歩きながら軽く敬礼を返す。


イライラした顔をゲオルグの前で見せるわけにはいかないので、いったん足を止め、大きく深呼吸をした。

忘れろ、あの娘のことはもう忘れるんだ。頭の中で何度も繰り返す。

ただの侍女だ。我が家の使用人であって、それ以上でもそれ以下でもない。

いずれ適当な男を見つけて嫁に出せばいい。

そう考えた瞬間、はっとして拳を握りしめた。


背中の焼印....奴隷と言う秘密を抱えながら、あいつはこの先も生きていくのか。


嫁には出せない。いや、出せるわけがない。

あの白い肌、ふっくらとした唇、柔らかい髪。

他の男に触れさせてたまるものか。

エルンストは髪をぐしゃぐしゃとする。一体俺はどうしたいんだ.....。

俺以外あいつを守れる男はいない。

自分でも驚くほどフィーアに夢中になっているのに気づくエルンストだった。
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