たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
────白地に金の装飾が施された豪華な扉の前で大きく息を吐くとそれをノックをする。


「入れ」中から声がして、エルンストは中に入るとその場で敬礼する。


「ああ、堅苦しい挨拶はいい」


ゲオルグは近くに来るよう促した。


「世が以前、お前に言ったことを憶えているか?」


「はっ?」


ゲオルグから言われたことなどありすぎて、一体どの以前だ?エルンストは困惑した表情を浮かべる。



「お前の嫁探しの件だ」人差し指で机を”トントン”と叩く音が室内に響く。



....ああ。すっかり忘れていたエルンストは、記憶を引き出すのに時間がかかってしまった。


皇帝は執務机に両肘をついて「今宵どうだ?」意味ありげな顔をする。


「今夜....ですか?」


「そうだ。嫌とは言わせぬぞ」口元を上げる。
< 148 / 296 >

この作品をシェア

pagetop