たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
皇帝が側室を迎えることは何ら不思議ではないし問題でもない。

たが、いくら何でも早すぎはしないか?

面倒なことになったと内心舌打ちした。

皇妃ゾフィーとは、いとこ同士。

今宵の宴で側室を選んだとなれば、俺もただではすむまい。

『一緒にいてどうして陛下を止めなかった』と責められるのがおちだ。


年下とはいえ、ゾフィーは怒ると怖いのだ。


我ながらくだらないことを考えている。

自嘲気味にエルンストは肩をすくめた。


宴を欠席する策は無いものか?

急に腹痛が起きるのはどうだ?

いや、国境で隣国とのイザコザが起きたというのはどうだ?

コンラートが死んだとか?


どれも現実的ではないな。現実逃避が無理と悟ったエルンストの心はさらに沈んで行く。


やれやれ、屋敷に『今夜は帰らない』と伝令の早馬を出さねばならない。

さて帰らない理由を正直に言ったものか?思案するエルンストだった。
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