たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
慌てて部屋を飛出したせいで、靴を履いていないことに気づいたが、素足のまま玄関ドアに駆け寄ると、鍵をまわし扉を開ける。


目の前にはエルンストが立っていた。

「お帰りなさいませ」

うやうやしく頭を下げる。



「きゃっ」


フィーアの体はエルンストに抱きかかえられていた。


「ご主人様っ?!」


無言のままエルンストはフィーアを馬の背に難なく乗せると、自分もまたがり闇に向かって走り出した。


「あの?」


「いいからつかまっていろ」

それだけ言うと、視線を前に向けて手綱をあやつる。


フィーアはエルンストの胸に体をあずける。

でないと転げ落ちそうだった。





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