たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
エルンストの朝はフィーアの口づけから始まる。

「エルンスト様、朝でございます」

フィーアは二人きりの時は、エルンストを名前で呼ぶようになった。
これはエルンストのたっての希望でもあったが。


「うーん」寝がえりをうつと、エルンストはベッドにそっと腰掛けたフィーアの首に手を伸ばす。


その手を引き寄せると、まるでキスをせがむ子供のように甘えてくるのだ。


「こんなお姿、大陸一の騎士団長に憧れる子供たちが見たら、きっとビックリしますね」

エルンストの髪に白い指を通しながら、冗談めかして言う。


「そうさせたのはお前だ」

エルンストはまたしてもフィーアの艶やかな唇を欲する。


「今日はゾフィー様と面会のお約束があります。いつもより早くお屋敷を出ませんと」


「ああ、そうだった」


エルンストは体を起こすと、フィーアの腰に手をまわしてもう一度唇を重ねた。


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