たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
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皇妃姦通容疑の事件が思った以上に入り組んでいて、事態が簡単に収集できずにいるエルンストが屋敷に帰って来たのは3日ぶりで、日付が変わる少し前だった。


「ご主人様はあまり食事を召し上がらなかったね」


フィーアとルイーズは食事の後片付けをしていた。

いつもいる侍女長のヘレナは腰痛がひどいとかで今日は早々に自室に引き上げていた。


「何か大変な問題を抱えてらっしゃるみたいなの」


「ふーん。騎士って戦いをしてるだけじゃないのね?」ルイーズは首をかしげる。


「わたしにも詳しいお話はして下さらないから、よく分からないんだけど....」


ボーっとしていたせいで、フィーアは手元の食器を落としてしまった。

コトリと音をたてて、テーブルに落ちる。


「ご、ごめんなさい」


慌てて拾うと食器棚にしまう。


「あたしたち下級貴族は宮廷なんて関係ないけどさ、上級の貴族様は色々大変なのね」


ルイーズの嫌味にフィーアは黙って笑顔を作るだけだった。


確かに最近のエルンストは屋敷に帰って来ても食事をあまりとらないし、口数も減っている。



そばにいても、何の役にも立てない自分への苛立ちすらフィーアは感じていた。
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