たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
苦しい時に支えられない自分の不甲斐なさがフィーアの心を絞めつける。


仕事の話は機密に関わることもあるだろうから、話せないことも多いのだろうけど。

せめて屋敷にいる間は仕事を忘れて、安らいでいただきたい。

そう思うフィーアだ。



「フィーア、あたしこれで帰るから、裏口の戸締りお願いね」


「あ、わかった。遅いから気をつけて」


「お屋敷のすぐ裏だけどっ」


ルイーズはウインクして出て行った。
ルイーズの家は屋敷の裏手にあり3人家族で住んでいる。彼女の両親も屋敷で働いている。

父親は主に屋敷の修繕を担当し、母親は畑仕事が主だった。


ルイーズを見送ったあと、食堂の明かりを消しフィーアは燭台を手にすると自室への階段を登っていた。


三階にさしかかると、エルンストの両親が使っていた部屋の扉が開いている。


「お掃除の後、閉め忘れたかしら?」

不審に思ったフィーアは中をのぞく。

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