たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
家紋のユリの花が刺繍された重厚なソファーセットにエルンストが座っていた。

視線はどうやら窓に向けられているようだ。


明かりをつけず、月明りに照らされたエルンストの顔は青白く、どこかはかなげに見える。


フィーアが静かに声をかけると、無言でフィーアに視線を送る。


今日はいつものエルンスト様じゃないみたい。


「お邪魔でしたか?」

答えはなかった。しばしの沈黙の後、クルリと背を向けると、フィーアは部屋を出て行こうとした。


「フィーア」静かにそっと背中に掛けられた声。



フィーアはビクンとして振り向かずに足を止めた。








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