たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「母がこの屋敷に嫁いで来たのはお前と同じ歳だった。翌年には俺が生まれた」


フィーアはゆっくりと振り返る。


「来てくれ」おもむろに立ち上がると、エルンストはフィーアの手をとり自分の部屋へと入り、さらに寝室へと向かう。


「エルンスト様?」

問いかけに答えはない。




すると沢山あるクローゼットのひとつの扉を開く。

それはフィーアも開けたことのない扉だった。


中には白いドレスが掛かっている。


「ベーゼンドルフ家では代々花嫁はこれを着る」


見れば絹に金糸が織り込まれた豪華なものだった。


「これを着てくれないか?」


「今....でございますか?」


「ああ」


エルンストの黒曜石のような瞳に見つめられて、「はい」とフィーアは答えた。
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