たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「────エルンスト様」


バルコニーで着替えを待っていたエルンストは振り返って言葉を失った。


月明りに照らされたフィーアの姿は、月の女神アルテミスを思わせた。

わずかに開いたドレスの胸元は月光で青白く夜に浮かび出され、美しく輝くその姿は女神の象徴である純潔を体現しているようだった。


今すぐにでも抱きしめたい衝動を抑えてエルンストはフィーアの手を取った。


「とても綺麗だ」それ以外言葉が見つからない。


甘く濡れた唇は「はい」とつぶやき染めたほほを隠すように瞳を伏せた。



フィーアに見つめられて今まで押えていた激情が溢れて来る。


「愛して....いいか」


「......は...い」



ためらいがちな声にエルンストはたまらずフィーアを抱きしめた。
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