たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「ご主人様、ご主人様」
どうやらコンラートの様だ。


その声で目を覚ましたフィーアは慌てて体を起こす。

そしていつもと景色が違うことに一瞬とまどった。


が、エルンストの笑顔を見つけると、

「お、おはようございます」ブランケットを体に巻き付け、パッとほほを赤らめてうつむく。


そんな姿が可愛いとエルンストは思ったが、今は部屋の外にいる老人を何とかしなければならない。


「お前はここにいろ」

そう言って、立ち上がるとガウンを羽織り鍵を開けた。



「どうされました?いつもは鍵など掛けられないのに?」


どうでもいいことを聞いてくる。エルンストはイラっとしたが、

「さあ?酔った勢いでかけたのかもしれんな。そんなことよりこんな朝早く何だ?」

しれっとする。


「さようでございました。お城から早馬が参りまして、至急登城されたいとのことでございます」


「そうか?分かった」扉を閉めようとしたエルンストに、

「フィーアがいないのです。一体どこへ行ったのでしょう?」


こいつ、今日は随分しつこいな。そう思いつつ、

「庭でユリの手入れでもしているのではないか?支度は独りで出来るからお前は下がっていいぞ」


しかし.....。
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