たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「今日はわたくしがお支度のお手伝いを....」

エルンストはイライラした様子で頭をかいた。


「お前は気の利かぬ男だな、コンラート」


「はっ?おっしゃる意味がわかりかねます」と首をかしげる。


こいつは仕事に忠実なだけだ。そう思い直すと、

「冗談だ。この時間だとルイーズもまだ来ておるまい。調理場でも手伝ってやれ」

笑顔でコンラートの背中を押した。


「はぁ?」さっぱりわけが分からないっと言った表情で一礼すると、背を向け部屋を後にした。


「まったく」エルンストは嘆息する。


コンラートの姿がなくなったのを確認すると、メイドの服を着たフィーアが恥ずかしそうに寝室から姿を現し、


「お支度のお手伝いをします」


騎士団の制服の入っているクローゼットからあれこれ出してきた。


「こんな朝早くから何の騒ぎだ?城で何かあったのか?俺はせっかく昨日の余韻を楽しんでいたんだぞ」


エルンストは少し不機嫌だ。


フィーアは熱くなるほほを隠すように「良いことだといいのですが」そうつぶやく。


「ああ....」

だが、エルンストは知っていた。早馬が来るときは大抵凶事であることを。
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