たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
ファーレンハイトが後ろを追ってくる。
「皇妃を幽閉など正気とは思えない!!」
「閣下、落ち着いて下さい」ファーレンハイトは慌てる自分を差し置いている。
「これが落ち着いていられるかっ!!」
大股で城の廊下を歩くエルンストの元に部下が走ってやってきた。
「閣下、陛下へのお目通りがかないました」
「よしっ」うなずくと、エルンストとファーレンハイトは皇帝ゲオルグの元へと急いだ。
女官の案内で、二人が通されたのは食堂だった。
ゲオルグは側室のグレーテと朝食をとっているところだった。
「陛下、皇妃様を幽閉されたと伺いましたが、一体どういうことですかっ?」
「朝から騒がしいぞ、エルンスト」
スープを口に運びながらゲオルグはグレーテに微笑みかける。
「皇妃の裏切りによって幽閉したのだ」
「何を根拠にそう申されますか?皇妃様と姦通した相手の男が捕まりましたか?」
「根拠?そんなものは必要ない。世が決めたことだ」
グレーテの甘言であることは疑う余地もない。
エルンストは拳を爪痕が残るくらい握りしめた。