たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「皇妃様は誰より陛下を大切に想っておられました」


「さて、どうだろうか?」


「陛下っ!!」感情的になったエルンストをゲオルグは取り合わない。


「お話はお済でしょ?お下がりなさい。いくらシュバルツリーリエの団長だからと、こんな所まで押しかけてくるなど無礼であろう」

もはや皇妃然として、グレーテが忌々しそうにエルンストをにらんでくる。


「わたくしと陛下の至福の時間をそなたが邪魔する権利はない」

小娘がっ。エルンストは内心舌打ちする。

そんなエルンストに悪意の視線を向けると、グレーテは口の端を歪めて言葉を続ける。

「おおっ!そうであった。そなたはゾフィー様のいとこであったな。しかし、いとこだからと、大きな顔をしてもらっては困る。
そうじゃ!皇妃様の姦通罪が成立したら、その身柄を捕縛するのはそなたにさせてあげましょう」


ワナワナと震えるエルンストの腕を後ろからファーレンハイトがつかんだ。

そうしないと今にも殴りかかりそうだった。


「騎士団長は礼儀を知らぬようじゃ。そなたの名声にてこの場は免じてやるが、二度とその顔わたくしに見せるでないぞっ!!お下がりなさいっ!!」


グレーテの剣幕にゲルフェルトはため息をつくと、

「グレーテの言う通りだ。もう下がれエルンスト」

顔の前で手を払い、退室を促した。


エルンストは不満を全身にみなぎらせながら敬礼すると、食堂を辞した。



ゲオルグは完全にグレーテに骨抜きにされている。

グレーテは確かに美しい娘ではあったが、性根の悪さが顔に出ている。

何故あのような娘を側室に?と思わざるを得ないエルンストだ。
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