たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
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時間が経つのは早い。

エルンストが問題の突破口を見いだせないまま既に一か月以上が過ぎていた。


季節は夏の半ばになっていた。


貴族たちの間でも、本当に皇妃は罪を犯したのかと疑問を呈する者もいたが、さすがに大っぴらには口に出して言えなかった。
その分不満は地下化していった。


そんな声が耳に入るのか、ゲオルグも皇妃の命を取るのは気が引けるらしく、グレーテの『皇妃を殺して』との甘言をさすがに退けていた。


グレーテの言いなりになってはいたものの、ゾフィーのお腹には子供がいる。万が一にも自分の子であったら。との思いがゲオルグをためらわせていた。


おまけにゾフィーの父、この国の宰相であるユンゲルスも一緒に幽閉されていた為に、国政は停滞し混乱が少しづつ生じていた。


混乱を収拾すべく側室グレーテの推挙で宰相代行になったバルツァー子爵は、あまり有能な男ではなかった為、かえって傷口を広げる結果となっていた。


そんな折、フィーアは皇妃ゾフィーが幽閉されている建物を訪れていた。

城から少し離れたところにある、ムジークの離宮と呼ばれる場所だ。


一般的な離宮とは異なり、城壁の中にあり音楽が趣味のゲオルグが室内管弦楽を聞くためだけに作らせた小さな建物だった。


こんな狭い所に皇妃様がいらっしゃるなんて、おいたわしい。

フィーアは思わずにはいられない。


いつものように皇妃が使っている小さな部屋に案内されると、


「よく来てくれました。フィーア」


ゾフィーは笑顔でフィーアを迎えると、椅子を勧めてくれる。

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