たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
ゾフィーはエルンストからフィーアの話をよく聞いていたこともあり、常々会いたいと思っていたが、こんな形になろうとは皮肉なものである。

もちろん奴隷だったことは伏せられていたが。

「お腹の具合はいかがですか?」

「ありがとう。今朝主治医に見せたら順調ですって」

ゾフィーは微笑む。


「今日はプディングを作って参りました」

バスケットから取り出すと、皿にのせてゾフィーの前に置く。


「まあ、美味しそう。フィーアはお菓子作りが上手だから、いつも楽しみにしているのよ。ここではデザートが出ないもの。宮廷に居たらいくらでも食べられたのに」

ゾフィーは不満を漏らす余裕が出てきた。

それまでは泣きごとに明け暮れる日々だった。

ある日、ファーレンハイトから”命の危険は差し当たってない”と報告があったのも余裕が出てくる一因になったと思われる。

当然その情報は宮廷の女官からもたらされたものだったが。


「お口にあいますかどうか」


「合うに決まってるわ。そうっ、この前のシュトーレン美味しかったからまた作ってきてね」

笑顔でプディングを頬張るゾフィー。


フィーアより3歳年上のゾフィーは初めて会った時からフィーアに優しく接してくれている。

趣味の多いフィーアはゾフィーの趣味である音楽や美術にも詳しく、何かと意気投合していた。


ハープやチェンバロなどを弾いたり、ゾフィーにチェンバロのレッスンをつけたりしてゾフィーの心を慰めていた。


「今日は何を弾きましょうか?」


「そうね、少しお話がしたいのだけれど」


話?雑談はよくしているけれど?

フィーアは首をかしげる。
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