たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「あなたのお里の話を聞かせて。どんな所で育って、どんな暮らしをしていたか」


ゾフィーは笑うとティーカップを口に運んだ。


「わたくしのですか?お話するような面白いことなどありませんが?」


「うふふ、いいのよ聞かせて」


満面の笑みでゾフィーは身を乗り出してくる。


「はぁ....」フィーアは以前エルンストから聞かされていた、遠縁にあたる娘の話を始めた。



話しの途中で「嘘ばっかり」テーブルに肘をついて聞いていたゾフィーはそう言って微笑んだ。


「だってお父様に聞いたら、そんな娘はいないっておっしゃったわ」

エルンストからフィーアの話を聞いた時、何となく違和感を感じてゾフィーは父親にそれとなく確認をしていた。

確かに遠縁の娘はいたが、とっくに嫁いでいたらしい。



全身から血の気が引くのをフィーアは感じた。


「兄さまが愛している方のことをわたしも知りたいの。本当のことを話して」


優しくお姉さんらしさを見せるゾフィーに、フィーアは動揺していた。


「そ、それは....」ティーカップに添えられた手がカタカタと震える。


ゾフィー様なら正直に話しても平気だろうか?一瞬そう思った。

.....いいえ。黙っていたほうがいい。話したところでどうにかなるものでもないし。

かえって辛くなるだけ。
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