たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
ゾフィーはそんなフィーアを見つめながら、

「わたし子供の頃から兄さまのお嫁様になるのが夢だったの。いとこだから結婚は出来ないけれど」


ゾフィーは「ふっ」と小さく笑う。


「だから兄さまのお嫁様は、わたしのお眼鏡に叶う女性でなくてはダメなの」


決してゾフィーは悪気があって言ったわけではなかった。

フィーアを試すつもりもない。

エルンストとフィーアを純粋に祝福したかっただけなのだ。

だから里の話や過去のことなど興味本位でたいした意味はない。

共通の話題があれば、それで盛り上がれると軽い気持ちだった。


しかし、フィーアにとっては事情が異なる。

フィーアはうつむいてまま言葉を発せられないでいる。

その心は乱れていた。

さすがに結婚は考えていなかったが、ゾフィーの言葉にいささか打ちのめされた感があった。

エルンストのそばに居るとはこういうことだ。

たとえ幽閉されているとはいえ帝室の人間が身内にいるのだ。

今はっきりと自覚した。
私は彼の手を離さなければいけない。

彼には約束された未来がある。

私はきっと彼の立場を危うくしてしまう。

お荷物な女にはなりたくない。

壊れそうな気持ちを抑えてフィーアはゾフィーを見ると、無理をして笑顔を作る。
身重のゾフィーに迷惑がかかることを恐れ、フィーアは嘘をつくことにした。
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