たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「わたくしはご主人様と結婚などと大それたことは考えておりません。どうかご安心ください。ゾフィー様のお眼鏡に叶う女性はいずれ現れましょう」


ゾフィーはえっ?!と驚いた顔をした。


「だって、あなたは兄さまと結婚したいでしょ?」


そんな事あるわけない。フィーアは思う。
私の秘密をエルンスト様は知っているのだから。

天と地がひっくり返りでもしない限り結婚はあり得ない。


「わたくしは田舎の貧乏貴族の出でございます。上級貴族と下級貴族の結婚は認められておりません」


「それはそうだけど、特例もあるのよ」ゾフィーは心配してくれる。


「きっとご主人様は宮廷の貴婦人ばかりをご覧になっておいでだから、田舎者のわたくしが珍しかったのでしょう。一時の気まぐれを起こされたのです」


「でも、その上流階級の話し言葉は?」ゾフィーは首をかしげる。



「ベーゼンドルフ家につかえる前に、上級貴族のお屋敷にお仕えしておりましたので、そこで少し憶えました」


昔の私なら結婚に何の障害も無かった。

今にも涙が溢れそうな心をフィーアは必至にこらえていた。



「でもね、わたしあなたが下級貴族出身でも兄さまが選んだ方ならいいと思うの。
わたしが幽閉などされていなかったら、皇帝陛下に結婚のお許しをお願いしたわ」


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