たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
貴族の結婚には皇帝の許可がいる。

身元もそれなりに調べられるし、ゾフィーが言うほど簡単でもない。

ゾフィーの気持ちはとても嬉しかったが、私はもう貴族ではない。
エルンストの愛で忘れかけていたことをまた思い出してしまった。私は奴隷なのだ。

消えることのない事実。そして背中の焼印。

フィーアは涙を隠すように目をわずかに閉じた。


「わたくしは身の程をわきまえております。皇妃様におかれましてはどうぞこの話はお忘れ下さい」


「そ、そう?あなたはそれでいいの?」

フィーアは笑顔でそれに答えた。

「でも、兄さまはどうかしら?兄さまもそれでいいのかしら?」


「それは....直接お聞きになればよろしいのでは?」

フィーアに答えられるはずもない。


「それも....そうね」どうやらゾフィーは納得したようだ。


「で、でもね。もし陛下がグレーテに飽きてわたしの幽閉を解かれたら、必ずお願いするからね」


ゾフィーはフィーアの手を取った。


それでもダメなのだ。


「ありがとうございます」フィーアは静かに頭を下げた。
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