たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「あまり時間がないので、私ものんびりと尋問するわけにはいかんのだ」

女のあごをつかむと、自分の顔を近づける。


「白状しなくても構わんよ。いずれ身元は分かる。さすればそなたに関わる一族郎党皆殺しだ。何故なら罪状は皇妃暗殺未遂。ただでは済まん」


職務を遂行するエンストの姿にフィーアは驚いた。

屋敷で不愛想にしていても、『皆殺し』などとそんな物騒な言葉を聞いたことがない。

冷徹で鋭い視線を女に向け、情け容赦ないとばかりに話しかけている。

目の前にいるエルンストは明らかに別人だった。




「だがっ」エルンストは女のあごをつかむ手に力を込めた。


「正直に話せば助けてやらないこともない。見たところ、そなたまだ10代であろう。むやみに命を無駄にすることはない」


エルンストに迫力負けした女は諦めたとばかりに重い口を開いた。


女の名はアメリーと言い、最近ゲルフェルト侯爵家に雇われたとのことだ。


侯爵家の執事から小瓶を渡され、『中身を皇妃の食事に入れるように』と言われたこと。また、今回の事は『陛下のご意向である』と言われたことを白状した。
< 231 / 296 >

この作品をシェア

pagetop