たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
これに驚きショックを隠せなかったのは皇妃ゾフィーだった。

「陛下のご意向ですって?!」

そう叫ぶと半狂乱に近い状態になった。両手で頭を抱え、泣き叫ぶ。


「ゾフィー様っ!」フィーアが駆け寄り体を支えた。


「陛下がわたくしを殺そうとしたと言うのっ!!」

顔を両手で押え叫び続ける。

皇妃付きの女官たちも落ち着かせようと必死になる。


「皇妃様、落ち着いて下さいっ!。この女の申すことはまだ真実とは決まっておりません!!」
エルンストも諭す。


「あたしの言う事が嘘だってのっ?!冗談じゃないよ。皇帝はそこの皇妃様を殺そうとしたんだよ!!」


「にわかには信じられんな」落ち着いた様子でエルンストが言い放つ。


その言葉にアメリーはむきになった。

「あたし聞いちまったんだよっ。ゲルフェルト侯爵と執事さんが話してるところをさっ!」


一同の視線がアメリーに集まる。


「側室のグレーテが『皇妃を殺せっ』て言ったらしくてさ。皇帝もとうとう決心したって言ってたよ。侯爵だって『よくやった』って言ってたんだから!」

アメリーは完全に開き直っているようだが、実はエルンストの言葉に乗せられていたのだった。


「エグムント殿、これで証言は得られました。グレーテ及びゲルフェルト侯は皇妃暗殺の容疑で拘禁できますな?」

エルンストに対してエグムントは渋い顔をした。


「確かにグレーテとゲルフェルトは拘禁できるが、陛下が何と仰せになるか?
ご寵愛の側室とその親を捕まえることを良しとされるか?
陛下のお心ひとつでどうにでもなりますからな」

専制君主制の悪い所だ。エルンストは拳を握りしめた。

君主が善政をしいていれば問題はないのだが、統治を私物化すれば、こうした歪みが必ず生まれる。

しかしそれを、改善するすべはない。

いや、ひとつだけある。それは.....。エルンストはそれを胸に押し込んだ。



「あたしは皇妃を殺してないよっ!!現にそこに生きてるだろっ!!それにあたしは執事さんのいいつけを守っただけだからねっ」突然アメリーは声を張り上げる。
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