たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「黙れっ!痴れ者っ!」エルンストがアメリーの胸元をつかむと、

”ぺっ”アメリーはエルンストにツバを吐いた。

「何も知らなかったんだよ。まさかあの灰色の液体が毒だったなんて知らなかったんだ。皇妃を殺そうなんて思ってなかったよ」

アメリーはエルンストに「助けてくれ」と懇願する。

「そんな言い訳が通ると思うか」怒りを抑えた声は逆に恐怖を誘う。

「助けてよ。あたしだって被害者なんだよっ」


泣きながら今度はフィーアの足元にすがりついて来た。

「あんただって侍女なんだろ?侍女は命令に逆らえないこと分かるよね?」


そう、私はアメリーと同じ侍女。エルンスト様の屋敷で一緒に働くルイーズも。
けれど、ルイーズも私もこんなに愚かではない。

もし不審な点があれば、近衛兵に話をすればいい。

命令されたから、「はいそうですか」では子供の使いだ。

フィーアは憤りを感じ、そして足元のアメリーを激しい嫌悪感で一瞥した。

「あなたも貴族の端くれならプライドを持ちなさい。
それに、ゲルフェルト侯の会話を聞いていたのなら、あの液体が水銀であることは一目遼前。知らなかった?よくそんなことが言えますね。もし本当に知らなかったのなら、それはあなたの無知が招いた結果です。あなたが皇妃様を暗殺しようとした事実は消えません。それこそ万死にあたいします。無知を後悔しなさい」

冷たく突き放されて、アメリーは床にワッと泣き崩れる。

フィーアの高潔で毅然とした態度に皆驚き言葉を失った。

それはまるで王女然としていた。
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