たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「うぐっ!」

それは突然だった。エルンストの横でフィーアも苦しみだした。激しく嘔吐し白目をむいている。

「フィーア?!」

驚いてエルンストが抱きかかえる。

「お前も水銀を吸ったのかっ?!何故言わなかった?!」


「解毒剤をっ!!」医者が叫ぶ。


医者の弟子らしき人物がカバンから解毒剤を取り出す。

エルンストの腕の中で苦しむフィーアに医者が解毒剤を飲ませようとするが、すぐに吐き出してしまう。

「苦しいのかっ?!」

眉をよせフィーアは苦悶の表情から解放されない。


「飲んでくれなくては、症状は改善されません」


まるで他人事のような医者の言葉にエルンストはためらいなく怒りをぶつけた。


「もしフィーアが死んだら、お前にこの世のあらゆる艱難辛苦を味あわせてやる」

医者の背筋が凍るくらいにらみつける。


エルンストは医者から解毒剤を奪いとると、自らの口に含みフィーアの口へ移した。


フィーア頼む飲んでくれ。


「ゲホッ」エルンストの願い虚しくフィーアは吐き出してしまう。


諦めずにエルンストは何度も何度も口移しを繰り返す。

生きてくれフィーアっ!!




「閣下.....」


「兄さま.....」

ゾフィーの瞳からは涙が溢れていた。
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